■埼玉新聞「話題スポット」(11月2日付1面)に掲載されました。
支え合うシングルマザー
◆「1人じゃない」実感/朝霞に専用のシェアハウス 入居して「心に余裕」
たった1人で子育てに奮闘するシングルマザー。そんな彼女たちを応援するシェアハウス「motherleaf」が朝霞市幸町にオープンしてから、半年がたった。入居者たちはそれぞれ悩みを抱えながらも支え合い、「1人じゃない」ことを実感しながら日々を送っている。
ピンポーン-。玄関のチャイムが鳴ると、ピザが届いた。この日は入居者たちの誕生パーティー。
テーブルの上にはたくさんの皿とコップが並ぶ。
「かんぱーい」「このピザおいしい」。母子がちの会話が弾み、リビングににぎやかな時間が流れる。じっとしていられない子どもたち。母親も世話に追われるが、そんな大変さも笑って過ごす。
母子たちが暮らすマザーリーフは、今年5月、不動産業を営む○○○○さん(43)が始めた。急増するシェアハウスとシングルマザーに着目、両者を掛け合わせ何かできないかを考えた。3階建て5世帯用のシェアハウスには現在、3世帯の母子が暮らす。リビングやキッチンは共有。洗濯機や炊飯器、基本的な調味料なども一緒に使っている。
◆合言葉は「子ども見てて」
約1ヶ月前にマザーリーフに入居した実花さん(23)=仮名は、1歳と0歳の女児2人の母親。離婚する前から夫と別れて暮らすことを考えていた。夜間の仕事を始め、仕事が終わった早朝4時に長女を迎えに託児所へ行く日々。眠りに就きたい実花さんとは逆に、長女は泣き出したりいたずらをしたり。「何やってんの」。思わず大きな声を出したことも。仕事や子どものため、体調が悪くても病院に行かないことさえあった。そんな生活が続き、精神的に追い詰められていた。
マザーリーフに引っ越し、次女が生まれてからは洗濯も出掛ける準備も2倍の時間がかかった。赤ちゃんの面倒を見るため、あまり部屋からも出られない。「泣き声ばかり聞いていると気がおかしくなりそう。」大変な日々は続く。
それでも、シェアハウスには助け合える仲間がいる。ミルクやお風呂の時など、互いにお願いするときはしょっちゅうだ。ご飯や買い物を共にしたり、揺り籠や小さくなった子どもの服を譲ったりすることも。実花さんは「心に余裕が出てきた」と」言い、同じような境遇にある人たちの存在が心強いと感じている。
「ちょっと子ども見てて」はママたち3人の合言葉。「1人じゃない」。そんな思いが“シングル”マザーたちの支えになっていた。
◆ほんのちょっとの助け
構成労働省の全国母子世帯等調査(2011年度)によると、母子家庭の約20%が「相談相手がいない」と回答。そのうち「相談相手が欲しい」とした人は60%を超える。家庭内暴力(DV)やうつ病、生活保護、仕事、両親ー。オーナーの○○さんも入居者たちと関わる中で、いろんな悩みを抱えるシングルマザーを見てきた。
その中で感じたのは、誰でも母子家庭になる可能性があり、なった途端に経済的な問題や孤立などといった厳しい現実が待ち構えているということだ。一方で、シングルマザーたちが集うコミュニティーや専用のシェアハウスのような場は少ない。だからこそ「誰か話す相手がいる、またほんのちょっと助けてくれる、そんなシェハウスにしたい」。そう思い描いている。
(取材:中野えみり)
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